高齢化の進展などによる将来の医療ニーズも踏まえ、行政はもとより大学・医師会・医療機関などの医療関係者が一体となって医師の偏在是正策を展開し、適正配置の実現に資する研究です。
DPC調査データ分析は、平成26年10月に策定した「医療介護総合確保法に基づく県計画」に定めるところにより、平成26年~28年度までの間で実施するもののうち、平成28年度事業計画に基づき実施しました。
愛知県内のDPC病院69病院のうち、承諾を得られた67病院のDPC調査データを収集・コーディング等を行い、分析・考察を行いました。
主に平成26年度DPC調査データに基づいていますが、高額機器の検査使用状況など、薬剤・処置・加算等の算定状況から分析が必要なものについては、平成27年度DPC調査データを使用しています。
厚生労働省が平成27年3月に示した地域医療構想策定ガイドラインの医療機能区分(高度急性期:3,000点以上、急性期:600点以上、回復期:175点以上、慢性期175点未満)に基づき、DPCコード(診断群分類番号)のMDC(Major Diagnostic Category)別の医療資源投入量の分布状況について、県単位、地域医療構想区域単位の実態把握を行いました。
また、DPC調査データの患者郵便番号の情報より、医療機関所在地だけでなく患者住所地別の分析も行いました。
【医療資源投入量の分布】
MDC、医療機関所在地、手術の有無によって、医療資源投入量の分布に差があることが見て取れます。
01神経系疾患や04呼吸器系疾患のように、多くの疾患では、入院日数の経過につれて、高度急性期(3000点以上)や急性期(600点以上)の占める割合が逓減していく傾向にありますが、13血液・造血器・免疫臓器の疾患、14新生児疾患・先天性奇形、15小児疾患においては、常に高度急性期(3000点以上)や急性期(600点以上)の占める割合が高い結果が出ています。
【患者住所地別 医療資源投入量の分布】
患者住所地の違いによって医療資源投入量の違いがあるかを確認しました。
例えばMDC01神経系疾患において、尾張東部構想区域と西三河南部西構想区域を比較したところ、入院患者数は大きく変わらず、高度急性期の投入量も大差ないですが、尾張東部構想区域では慢性期より回復期の医療資源投入が多くみられる等、地域により若干の差がある場合もみられました。しかし全体を通して大きな地域差はみられませんでした。
高額医療の分布状況や高額機器を用いた検査の実施状況を把握しました。
【高額医療の分布】
入院料とリハビリ料を除いた医療費が100万円以上の患者が、どの病院にかかっているか、疾患(MDC別)は何かを分析しました。
患者数としては、大学病院や救急センターとなっている病院が多くを占めており、高度医療を担っていることが伺えました。
また、疾患としてはMDC05循環器系疾患が大半を占めており、手技や材料費も高額になりがちな状況を反映する形となりました。
【高額機器を用いた検査の実施状況】
次の3点の高額機器を用いた検査の実施状況を分析しました。
①マルチスライスCT64列以上
②MRI3テスラ以上
③PETCT
MRI3テスラ以上のものを構想区域で比較すると、1台あたりの診療報酬算定件数はほぼ近い値となったが、64列CTでは、1台あたりの診療報酬算定件数が5,541.3から18,853と3倍の差があることがわかりました。
またPETCTにおいても、487.5から1,204と2倍以上の差があることがわかりました。
これは単純に対象患者数の問題もあるが、患者の移動により保有している医療機関での活用が進まない状況であるのか、その圏域では過剰な投資となっているのかを含め、有効活用のための検討が必要です。
心血管疾患、がんについて、対応状況をみました。
【心筋梗塞等の心血管疾患の対応状況】
患者住所地より、受診医療機関所在地への移動状況をMDC別手術有無で分析を行いました。
急性心筋梗塞を含むMDC05循環器系疾患の「手術あり」を示していますが、早急に対処する必要があると考えられることから、構想区域間での移動は少ないと予想されました。
しかし、対応可能な医療機関の所在の関係もあり、海部構想区域、知多半島構想区域、西三河南部東構想区域、東三河北部構想区域では自構想区域内での受診率が70%を切っており、海部構想区域と知多半島構想区域と東三河北部構想区域では50%も下回っているという結果になりました。
【がんの対応状況】
大腸がん、胃がん、肺がん、前立腺がん、肝がん、乳がん、子宮がん、小児がんについて分析を行いました。
それぞれの地域医療構想区域別入院件数、患者住所地別の受療行動を示します。
中外製薬株式会社 愛知県医療情報セミナー(2017年9月23日)において、名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター
外部連携部門長・病院助教 小林大介より発表した分析報告を公開します。